相談者は、和解離婚が成立した夫であったが、妻に子の親権を取られてしまい、毎月の養育費の負担が取り決められた。
相談者は、約束通り、毎月養育費を支払っていたところ、元妻の方から、お金を貸して欲しいと頼まれて、仕方なく、養育費を1ヶ月分前貸しする形で、一度に2ヶ月分支払った。相談者は、元妻も養育費の前貸しを承知していると考え、次月に養育費を支払わなかった。
すると、元妻は、養育費が未払となった理由を相談者に質問することもなく、突然、養育費の未払を理由とする給与債権の差押えを申し立ててきた。
養育費の場合、1回の申立てで、将来発生する養育費分についても毎月の給与から強制的に支払を受けられる「定期金債権による差押え」という制度を利用できる。元妻は、たった1回の養育費未払で、かつ、養育費を前借りしていたにもかかわらず、この定期金債権による給与差押えを行った。
相談者としては、翌月以降養育費を支払うつもりがあっても、元妻の方が申立を取り下げるか、強制執行に対する異議手続きが通るまで、強制的に給与から養育費分が差し引かれ続けるという状況に陥った。
相談者は、会社に対する信用を失うことになるため、この給与差押えを止めたいと相談してきた。
そのため、弁護士は、直ちに、請求異議訴訟提起と強制執行停止申立を行った。強制執行停止申立が通れば、請求異議訴訟が終わる前から給与差押えを止めることができる。
相談者は、差押命令の通知が届いた直後に、前払い分とは別に、当月分の養育費も振り込んでいた。その事情に加えて、元妻が当月分の養育費を支払わなければ差押えをすると説明していれば、やむを得ず、その支払いに応じていたはずであることや、これまでの支払実績からも、将来にわたって養育費が未払となる危険性がないことを申立書で説明した。
裁判所は、弁護士からの申立を受けて、すぐに元妻を問いただしたようである。申立直後に、元妻は、給与差押を取り下げたことで解決となった。裁判所から、差押手続きを悪用しないように注意を受けたものと思われる。
給与差押えの執行停止の事例
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