父親に幼児の親権が認められた事例

相談者は夫の側で、妻が不貞行為を行って、5歳の子を置いて家を出て行ったが、妻の側から子の親権を主張された事案。
夫は、探偵を入れて、あらかじめ不貞の証拠をつかんでいた。
弁護士が入る前に夫と妻で話し合った時点では、夫が不貞の調査報告書を妻に示して、離婚に応じること、慰謝料を支払うこと、及び、子の親権を渡すことの3点を要求したところ、妻は一度はこの条件を飲んでいた。
しかし、妻が弁護士に相談して入れ知恵されたのか、逆に、子の親権を主張して、子を引き渡すよう求めて、離婚調停を起こしてきた。
そのタイミングで依頼を受け、夫側の代理人として離婚調停に参加した。
親権については、心理学や社会学の専門家である家庭裁判所調査官が、夫婦双方の家族関係や生活状況やこれまでの子との関係性などを調査して、夫婦どちらが親権者にふさわしいかの意見を述べる調査報告書が作成される。
10歳くらいまでの年少者の場合、母性優先の原則が適用されて、不貞を行った妻であっても親権を取れることが多い。
ただ、この事案では、妻の側が、自分の養育能力の話よりも、夫が虐待を行っているという主張を強く押し出していた。
子は夫が引き取って育てており、夫自身の両親の手助けを受けながら、安定した生活環境が整えられていたことから、調査報告書では、虐待の心配はないが、夫の勤務シフトに夜勤が含まれる点が懸念されるという意見が示された。
そのため、調停では、調査報告書に則り、夫が勤務シフトを変えることができるかどうかや、夫の両親が今後も手助けを続けられるかという点が話し合われ、妻側の養育能力や母性優先の原則の観点はさほど重視されなかった。
結局、夫が勤務先から日勤中心で働くことの確約を得られ、両親の手助けについても見通しが立ったことから、調停委員の説得によって妻側も折れて、夫を親権者とする離婚調停が成立した。
5歳という年齢と、母親が親権を望んでいたことからして、夫に親権が認められたことは奇跡的とすらいえる結果であった。