遺言・相続
遺言・相続

遺言について

遺言とは

遺言とは、人が生前に自分が死亡した後の財産の分け方を指定する法的手段です。遺言が存在することで、遺産の配分や特定の個人に特別な品物を贈るといった、遺言者の意志が反映されます。
遺言には基本的に形式的要件が求められます。日本法における遺言の形式は大きく4種類あります。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、口述証書遺言です。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者自身がすべてを手書きで作成し、日付と署名または印鑑を付ける形式です。特別な立会人等は必要としないため、他人に知られずに遺言を作成することができます。しかし、形式違反や誤解を生じやすい点が欠点です。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、公証人が立ち会う中で作成し、公証人が保存します。そのため、形式違反や遺言の紛失、改ざんのリスクが低く、相続発生時にすぐに効力を生じます。ただし、費用がかかる上、公証人の前で遺言内容を明らかにしなければならないため、プライバシーが保たれにくいです。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は、遺言者が作成し、密封して公証人に提出します。公証人は内容を確認せず保存します。この形式は、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的性格を持ちます。

口述証書遺言とは

口述証書遺言は、遺言者が病気等で自分で書けない場合に、2人以上の立会人の前で口述し、その内容を立会人が記録します。遺言者と立会人が署名・押印します。

遺言書作成について

遺言書の内容には限定はありませんが、法律に反する内容や可能性のないことを指定することはできません。また、相続人が遺留分(一定の親族が必ず受け取るべき最低限度の財産)を侵害されないようにする規定もあります。
遺言書は遺言者が生存中は自由に変更または取り消すことができます。そして、遺言者の死によってその遺言は発効します。遺言書が存在すると、遺言者の死後、その内容が正確に実行される可能性が高まります。
遺言には、また特定の人物への遺産の譲渡だけでなく、遺言者の死後の自身の遺体の取り扱い、ペットの世話、または特定の慈善団体への寄付など、遺言者の意志をさまざまな形で反映することができます。
しかし、遺言が必ずしもスムーズな相続を保証するわけではありません。遺言内容が不明瞭であったり、遺留分を侵害している場合、遺言は法的に無効になる可能性があります。また、遺言があっても遺産分割について全ての相続人が納得していない場合、争いが生じることもあります。

弁護士から

遺言を作成する際には、法的な知識を有する専門家(弁護士や公証人など)に相談することを強く推奨します。適切なアドバイスを受けることで、遺言書の書き方、遺産の適切な分け方、または遺留分等の法的規定を理解することができます。
遺言は私たちの人生の最後のメッセージであり、私たちがこの世を去った後も、生きていたときの意志や価値観を示す重要な手段です。したがって、適切な形で遺言を作成し、管理することは非常に重要です。
これらを考えるとき、遺言が人生の最終段階でのみ関係するものではなく、人生設計の一部として早い段階から考えておくべきであると言えます。今日からでも遺言について考え、必要に応じて適切な専門家に相談することをおすすめします。

相続について

自然相続について

相続は、ある人が亡くなった際に、その財産が法律に従って他の人々(相続人)に移転する制度のことを指します。このプロセスは、遺産の分配、遺産税の計算、そして財産の法的な移転を含みます。
相続は、法律による自然相続と遺言による遺贈相続の2種類が存在します。法律による相続は、遺言が存在しない場合、または遺言が無効である場合に適用されます。日本の民法では、相続人は血縁関係や婚姻関係によって決まります。

自然相続の順位は以下の通りです
1位:配偶者、子
2位:父母
3位:兄弟姉妹
4位:祖父母
5位:伯父伯母

すなわち、1位の相続人がいない場合は2位の相続人が、2位の相続人がいない場合は3位の相続人が、というように順番に相続します。

遺言による相続について

遺言による相続は、遺言者が生前に書いた遺言書に従って遺産が分けられます。遺言による相続は自然相続に優先しますが、遺留分(一定の親族が必ず受け取るべき最低限度の財産)を侵害することはできません。

遺産税について

遺産の分配が決まった後、次に遺産税の問題が生じます。遺産税は、遺産を受け取る者が支払わなければならない税金であり、その計算は遺産の総額と相続人の数によって変わります。この遺産税は、税法に基づき計算され、相続人はその税金を納める責任があります。
さらに、遺産には不動産や株式、負債なども含まれるため、これらの財産の法的な移転の手続きも必要となります。そのため、遺産分割協議を経て、適切な手続きを行う必要があります。

弁護士から

相続は法律的な手続きが多く、また複雑な問題が多いため、専門的な知識が必要とされます。そのため、法律の専門家(弁護士や税理士など)に相談することは、適切な遺産分割や税務対策を行う上で非常に有益です。彼らは遺産の評価、遺産税の計算、財産の移転手続き等、複雑な手続きを円滑に進める手助けをしてくれます。
また、亡くなった方が借金を抱えていた場合、遺産と一緒にその借金も相続されます。そのため、相続放棄の手続きを行うことで、借金だけを遺される事態を防ぐことも可能です。相続放棄は、遺産の内容が明らかになる前でも行うことができ、相続人が相続手続きを始めてから3ヶ月以内に行わなければならないという期限があります。

さらに、遺産分割を巡って争いが生じることもあります。遺言があってもなくても、全ての相続人が納得する分配がなされない場合、遺産分割訴訟という手段を取ることもあります。しかし、これらの争いは時間も費用もかかるため、適切な遺言を作成することで予防することも可能です。

相続は人生の終わりに必ず訪れる事象であり、適切に準備しておくことで、亡くなった後の家族や親族の負担を軽減することが可能です。法律的な手続きや税金の問題、さらには相続人間の争いを防ぐためにも、生前から遺言を作成し、相続計画を立てておくことが大切です。亡くなったあとで遺された人々が困らないように、相続について早めに考え、必要ならば専門家に相談することをお勧めします。